155 最後につかもうとしたものは

2004年1月11日

 ピノン達との最後の戦いに敗れ、月の光を浴びて崩れ行くヤズム。彼は一番最後に崩れながらもその手を月に向けて持ち上げ、何かをしようとしていました。持ち上げたその手も月の光によって崩れてしまい、その目的を達することなく消滅してしまったわけですが、果たしてこの時ヤズムは何をしようとしていたのでしょう?自分を滅ぼす月の光から少しでも逃れるために、月に手をかざそうとしたと考えるのが妥当かもしれませんが、それだけではないような気がするんですよね。今回はそこにスポットを当てて、カオスサイドからヤズムという名前を与えられた闇の精霊について考えてみます。
例によっての独断ではあるのですが、あの行動には月の精霊に対する2つの思いがあったからではないかと考えています。1つには「なぜ、自分達は月の精霊の支配から逃れることはできないのか、なぜ月の光に祓われなければならないのか」という怒りの部分。後わずかのところで世界を闇で覆うことができたものを、空高くに封印され、まさかその封印を解くける人間がいようとは、そして月との契約を結んで月の精霊が地上に降りてきていることを考えもしなかったヤズム最大の誤算です。そしてもう1つは自分達を支配するほどまでに強力な力を持つ月の精霊に対する憧憬の部分。ヤズムが何をきっかけに名前を与えられ、世界を闇で覆うことを考えるようになってしまったのかは定かではありません。「闇の精霊」であるが故に疎んじられてしまう世界など壊してしまおうと考えたのかもしれません。そのためには強大な力が必要であり、だからこそ名前を与えられることによって大きな力を得ることを望んだものであるとすれば、月の精霊が持つ絶対的な力はヤズムにとっては是が非でも手に入れたいものであった、と考えることができます。「月が持つこの力が自分にもあれば、これだけの力があれば世界を支配することができたのに・・・」との思いが、月を掌中におさめんとばかりに手を伸ばさせたのではないか、と。
名前を与えられる前の闇の精霊はどのようなものであったのか、ヤズムが持っていた「心の隙」とは一体なんだったのか、何ゆえにそのような心の隙を抱くようになってしまったのか、まだまだ分からない部分がいくつもあります。月の光に溶けゆく自分の姿を見て彼は何を思ったのでしょう?薄れゆく意識の中で、彼の心をよぎったのは何だったのでしょう?色んな思いが、最後のあの行動に現れたのではないかと考える次第です。