163 夢幻世界の道標(みちしるべ)~歌姫

2004年5月9日

 父パウロを探して夢幻世界を旅するピエトロの前に時折現れては、意味深な歌を残していく歌姫。一度ならず二度、三度と姿を現すことからも、単なる偶然ではなく、何らかの理由があってのことだと思われます。果たして歌姫は誰で、一体なんのために歌を歌っているのかを考えていくことといたしましょう。
歌姫の正体を考えるにあたっては、欠かすことのできない1つの貴重な資料があります。それはポポローグのサントラのジャケット内に書かれている、エンディングテーマ「月の魔法 星の夢~夢を彷徨う人へ」の歌詞を作詞された、原作者田森庸介先生からのメッセージです。
「歌姫の歌は歌詞が二重構造になっていて、普通の詩のようでもありますが、そのウラには、ゲームのヒントが隠されているのです。
そして、歌詞を読み続けると歌姫の正体も明らかになるはずです。」
と。このメッセージの前半については、ポポローグの冒険を通じた後に歌詞を読めば、どの歌がどの場面を指しているのかは一目瞭然です。しかし、後半については未だにその真相をつかむことができていません。歌詞の中に「歌に埋もれた 秘密の言葉」とありますから、おそらくこの中には何かしらのヒントが含まれていることは間違いなさそうなのですが・・・。
ひとまずこの謎については横においておくこととして、歌姫の正体を推測するのであればやはりサニア王妃しかないでしょう。実際のところ、サニアの歌う姿を見聞きしたポポロクロイス城のメイドさんが、「サニア様って、きれいな声でお歌いになさるんですね。この前、王子様の部屋のテラスから歌声が聞こえたんですよ」と話しています。ポポロクロイス城が夢幻世界に取り込まれ、国王が失踪するという非常事態の中で、なんの意味もなくテラスで歌を歌うわけがありません。おそらくそこには何らかの理由が存在します。
サニア自身も世界に発生した異変の原因を調べ、時にはギルダと意見を交わしながら、少しでも早く元の世界に戻そうと尽力したはず、そしてその中にはピエトロの冒険に役立つことがいくつかあったことでしょう。しかし夢幻世界の特殊性から、魔力が不安定となってしまっているがため、ナルシアやギルダが時折したような、魔法に姿や言葉を乗せて届けることが難しい状況にありました。そこで、サニアが歌姫という形を取って、夢幻魔王に気付かれることのないよう歌詞の中にピエトロへのメッセージを込めて、歌として届けていたのではないか、とこう考えるわけです。サニアは竜族の長たる存在ですからそうした力を持ち合わせていたとしても何ら不思議ではありません。
サニアは、ピエトロの母であると同時に、勘当される道を選んでまで一緒になったパウロの妻でもあります。歌姫は子を思う気持ち、夫を思う気持ち、それが形をとって現れたもの、なのでしょうね。