127 マルコの距離感

2003年4月18日

 タキネン村で身体的にも精神的にも衝撃的に出会い、フローネルの森で迷っているところを半強制的にピノン達と冒険を共にするようになったマルコ。いきなり炎の中(火の聖域への入り口)に引きずり込まれて地獄に落ちたと錯覚させられた上に、動物だと思っていたパプーから人間の言葉で話しかけられて、さらにはそんな状況を意にも介さず当たり前のようにしていたピノンとルナでしたから、マルコにとっては何が何だか訳の分からない状態であったに違いありません。
だから当初の頃マルコは、「とんでもない奴らと関わっちゃったなぁ」と困惑する気持ちの方が強かったことでしょう。火の聖域でもピノン達に置いてけぼりにされそうになって慌ててついていく羽目になったようなものですし。無事にフローネルの森に戻ってきた時ゆで卵を前にひとしきり大騒ぎした後に、マルコはピノンに「お前って結構いい奴だったんだな」と固く手を取って言ってましたけど、これも何よりも一番怖いお母さんレオナに一緒に謝ってもらおうとの頭があった上での言葉でもあると思うので、決して最初からそれほど深くは親近感を抱いていなかったのでは、という気がします。じゃあ「2度とこいつらと一緒にいるのはゴメンだ」などと考えていたのかといえば、凍りついた海を見て悲痛な叫びで助けを求めるルナを追いかけていったくらいですから、決してそんなことはありません。これ、マルコにしてみると相当勇気の要った行動なんですよね。世界で一番恐れているレオナに何も言わずただ一言「ゴメン!」と言い残して飛び出してしまうなんてことは生まれて始めての行動であったはず。でも「勝手に家を飛び出して怒られたら怖い」という気持ちよりも「気が強くて生意気な女だけど、理由はよく分からないけど、とにかく力になってやらなきゃ」との思いが勝っていました。このあたりはまさに父親である白騎士譲りの騎士道精神によるもので、駆けてゆくマルコの後姿を微笑みながら見送っていたレオナは、そんな息子を何よりも誇らしく、嬉しく思っていたことでしょう。旅先でこの出来事を手紙か何かで知って、嬉しそうにうなずく白騎士の姿が思わず思い浮かんでしまいます。
ただ、それでもまだピノン達に対して一歩引いている部分があったという感は否めません。というのは氷に覆われた水の聖域への入り口を目の前にしてピノンとルナが話をしている間、マルコは「何かまた自分には訳の分からない話を2人でしているなぁ」と言わんばかりに、2人とは離れた場所に座って様子を見ているだけだったからなんです。この離れて座っていたことがまさしくマルコのピノン達に対する心の距離感の現われだったのかもしれません。しかしそれがきっと、ピノンと冒険を共にしているうちに、ルナの力になろうとまっすぐ一生懸命に凍った海の中を駆け巡るピノンの姿を見ているうちに、「何でコイツはこんなに一生懸命なんだろう?」とマルコなりに考えさせられる部分があったのではないでしょうか?そして氷の底に落ちそうになったピノンを助けるべく危機一髪のところでしっかりと手を掴んだ瞬間にマルコの腹が固まったんじゃないかと思います。「何かおかしな奴らだけど、俺もとことんこいつらに付き合ってみるか!」って。みんなと一緒に水の聖域目指して落っこちていく出来事がマルコにとっての大きな転換点になったのではないかなぁ、と考えています。
それからのマルコについては言うに及びません。決してピノンには真似の出来ないマルコ流(これも白騎士譲り?)の言い回しでルナを精一杯励ましたり、ヤズムとの最終決戦を前に城の前でたたずむピノンに「早く行くぞ!」と先陣を切って駆け出したり。マルコのこういう姿を見ていると、つくづく、「あぁ、やっぱり白騎士の息子なんだ」と再認識させられて、嬉しくなりました。ピノンにはない魅力を持ち合わせ、自然にその場の雰囲気を和ませてしまうムードメーカー的な存在であるマルコ、これからの彼の活躍に大いに期待しています♪