144 考えない力

2003年10月11日

 子どもと大人の違いってどんなところにあるのでしょうね?一口に違いといっても色々ありますから、決定的に「これ!」と言えるようなものはありませんが、「考えるよりも先に動くか、動くよりも先に考えるか」、これがそうした違いの1つではないかなと考えています。 ポポロの次回作「月の掟の冒険」の中で、ピノン達が月の掟の禁を破ってしまう、と紹介されています。果たして月の掟がどういうものであるのかは定かではありませんが、「掟」という言葉の意味を考えてみると、ピノン達の存在が非常に重要に思えてきます。
一般的に「掟」とは、掟が存在する以前の状態に良くない異変が生じてしまい、そうした異変を回避するために、二度と起きないようにするために定められるものです。故に掟を破る者に対しては、破った罪に対する代償が与えられることとなり、掟がいったん定められると、簡単にそれを破ることはできなくなります。掟の意味が大きければ大きいほど、その代償が大きければ大きいほど。しかし「掟」というものが存在する必要がなかった状態がかつてはあったわけですから、掟のある状態から掟のない元の状態に戻るためには、その掟を一度は破らなくてはいけないことになるでしょう。掟を守り続けていては、永久に掟がなくなることがないのですから。
そこで冒頭で考えた子どもと大人の違いが重要な意味を持ってきます。もし大人が掟を破ることを考えたとしても、代償やその先に待ち受けることを考えてしまい、結局は動けなくなってしまうと思います。つまりは「動くよりも先に考える」からですね。では子ども達ではどうか?そうした掟の存在を知る知らないということもありますが、何か「良いこと」が起きるのであれば、その行いが掟を破ってしまうものであったとしても、後のことは考えずにまずはその「良いこと」のために動くのではないでしょうか?これが「考えるよりも先に動く」ということで、今回のタイトルでもある「考えない力」です。代償の大きさを考えてしまい身動きできない大人と自分達ができる目の前のことのためにすぐに動いてしまえる子ども達。常にそのことが良い結果を産むとは限りませんが、これこそがまさに「子ども達だからこそできる大切なこと」ではないでしょうか?
森と海とを分けることとなった「月の掟」、これがひいては光と闇とが分かれたように陸と海とを分けることになってしまったのであれば、世界が本来あるべき姿を取り戻すためには、この掟が試練となります。 次回の冒険の行く末に何が待ち受けているのか分かりません。願うことは1つ、「誰もが幸せになれますように」、これに尽きます。