9 さらなる事故紹介

かつて、自分の交通事故歴を思い出しながら「7 事故紹介」を書いた時は、流石にもう事故に遭うことはないだろうなんて思ってましたが、災難は忘れたころにやってくるというのは本当でした。最後の事故から約30年が過ぎた2014年8月24日、人生最大で最悪の事故に遭いました、バイクで。

「うまい米を食べにいこう。米をおかずにごはんが食べられるほどの美味さだから」と、新潟の魚沼まで1泊2日で行く職場のツーリング。そもそも出発する時からトラブルに見舞われて、準備万端でバイクにまたがったら、車検から3か月しか過ぎてないのに何故かバッテリーが上がっていてエンジンがかかりません。「そんな状況なんで集合に遅れる可能性があります」と連絡しつつ、何とか復旧を試みると無事に始動し、途中で雨に降られてカッパを着たりしながらも、何とか予定に間に合うことができました。集合場所で「いやー、朝から大変でしたよ」なんて笑ってた時には、まさかその翌日にもっと大変なことが起きようとは夢にも思ってませんでしたけどね。その後は特にトラブルに見舞われることなく無事に宿に到着し、美味しい白米を食べて飲んで、ツーリングの1日目をしっかり堪能しました。

そして翌朝。天気は快晴。八海山の蔵元を見学したりしながら帰途につきましたが、後で思い返すと、この時にバイクの不調を感じる一瞬ヒヤッとした瞬間があったんですよね。長野自動車道を走っていたら、何が原因なのかは分かりませんがいきなりハンドルがブルン!と横に揺れて、ハンドルを取られそうな勢いに「何事だ!」と肝を冷やしたものの、それ以上のことは何も起きず、「道路のヒビに一瞬タイヤを取られたのだろうけど、危なかったなぁ」とそれで終わってしまいました。次のみどり湖のパーキングエリアで休憩した際、「さっきハンドルがこんな状態になってビックリしましたよ」と雑談でもみんなに話していれば、また状況は変わっていたかもしれません。

パーキングエリアを出発してしばらくした頃でしょうか、再びハンドルの横ブレが出ました。すぐに収まった先ほどとは違って、今回は右に左にと勝手にハンドルが揺れだして全く止まる気配がありません。両手に力を入れて何とか抑え込もうと試みるもダメ、振れ幅はどんどん大きくなり、「このままだと間違いなく転倒する」と絶望感に襲われながらも、それでもできる限り被害を最小限にしようと冷静に考えつつ、これが最後の手段だとハンドルに思いっきり体重を乗せるべく立ち上がったところ・・・ついに限界がきてハンドルが思いっきり左に切れた状態となり、段差を乗り越えてガードポールめがけてバイクが突っ込んでました。高速道路なのでスピードは相当出ていますから、ポールにバイクがガンガンと当たる衝撃は凄まじく、死ぬんじゃないかと思いながらも「転倒して地面に投げ出される時に首と腰を守らなあかん!」と考えて、とにかく頭を両手で抱えて体を丸めることに意識を向けました。実際にどの程度できていたのかは定かではありませんけど。

間もなくバイクはポールにはじかれて右側へと転倒し、そのスピードのままに地面に放り出されました。バイクは転倒したらしがみつかずに手を放すのがセオリー、後はもう出たとこ勝負です。どうしたものか、この間も意識を全く失うことはなく、バイクの車体がアスファルトに削られる金属音を聞きながら、視界を上へ下へと路面が行ったり来たりするのも見えていました。しばらく道路の上を転がって体が止まったところで真っ先に行ったのが自分が今高速道路のどの場所に横たわっているかの確認と体の機能点検。幸い、体は中央分離帯のくぼみの草の上にはまり込んでいたので少なくとも後続車にはねられる心配はなし。意識はしっかりしてる・・・首は動く・・・腰も動く・・・手足に力は入るからとりあえず麻痺はなし、これなら神経系は大丈夫!続いて手を見ると指が何本かあらぬ方向に曲がっていて、左手の小指なんか階段状になってる・・・なんだか手首も痛い。足にも鈍い痛みがあるから首をもたげて見るとあお向けに寝ているのに左足の先が完全に外側を向いていて明らかに折れてるわぁという状態。それでも特に半身不随に至るようなケガではなさそうだったのでひとまず安心はできました。事故も6回目になると冷静なもんです(笑

ケガの状況を把握しながら、「これで6回目の事故ー!また人生のネタが増えたよ・・・」なんて呑気なことを思いながらも考えたのはこれからのこと。入院すればスマホが唯一の連絡手段になるだろうし、両手がこんな状態だと病院に運ばれたら両手を固定されてしばらくスマホを使うことが難しくなるはず、ならば必要な連絡は今ここでしておくしかない!スマホはジャケットの右ポケットに入れてあったでの、折れてない指でチャックを下げて取り出してみると異常なし。来週の日曜日に大阪でミクさんのライブ後に飲む約束をしていたから、まずはこんな状況になってしまって行けなくなったことを連絡しなくちゃいけない。左手の折れていない人差し指と薬指でなんとかスマホを持ってツイート-「バイクで事故ったので週末の予定は中止で」。すっぽかす恐れのある予定はこれだけで、ほかに急いで連絡すべきことはなし、ということで後は救護隊の到着を待つばかりとなりました。もちろん、それまでの間、一緒のツーリング仲間が駆け寄ってくれて、「大丈夫か?!」「生きてまーす!」「ならとりあえずはよかった!」などなど安心してもらい、「何が起きた?」と聞かれましたが、その時点では前輪のバーストしか思い当たりませんでした。

やがて救護隊が到着し、搬送先の病院も決まり、救急車で向かうのかと思いきや、まさかのドクターヘリ搬送。最寄りのコンビニにスタンバイしているということで救急車でそこまで行き、ヘリで病院まで飛ぶことに。コンビニの駐車場にヘリがとまってたらお客さんもさぞかしビックリするだろうし、見世物になるよなぁなんて思ってたらちゃんとブルーシートで見えないように乗せ換えてくれました。そもそも飛行機が苦手で日頃から「絶対飛行機には乗りません」なんて話してたものですが、このような形でヘリに乗ることになろうとは夢にも思っていませんでしたよ・・・。

ケガは左脛の開放骨折、腰の圧迫骨折、左手首骨折、左親指・小指骨折、右小指骨折のほかに、ガードポールのワイヤーとの摩擦による負傷が数か所の全治3か月。現場では3週間位という話だったので、大したほどではないと高をくくってましたが甘かったです。バイク用のブーツとウェアを着ていたおかげか、足首の骨折はなかったですし、ワイヤーの摩擦も肉が数ミリの深さで削られはしたものの、半袖だったらもっと深くえぐれていたかもしれないので、バイクに乗る時はしっかりとした装備が重要です、絶対。

それからは手術や治療を受け、腰のコルセットができるまで寝たきり生活を強いられ、コルセット付けて起きられるようになると車いすから松葉杖と順調に回復して、時には看護師さんから「動き回りすぎ!」と怒られるくらいに体を動かせるようになり、搬送された病院で約1か月、転院した病院で約2か月入院、3か月間通いでリハビリと経過観察を受けて、翌年5月にはお医者さんから「もう通院しなくても大丈夫」とのお言葉をいただき、長きにわたる治療が終わりました。運動を始めても構わないとお墨付きをもらって、趣味のランニングを再開したものの、当初は下り坂でスピード出して止まる時に足踏ん張ったら折れるんじゃないか?なんて不安が最初の内はあったものですが、距離を伸ばしてスピードを上げてるうちに不安もなくなり、今では全力疾走できるし、フルマラソンも大丈夫!な状態ですから、人間の体は本当にたくましくできているものだと改めて感心しました。

バイクのハンドルがおかしくなった原因は、色々と調べてみたら、おそらくはウォブル現象というヤツではないか、との結論になりました。なんでも、ハンドルは本来左右に細かく揺れており、地面も上下に揺れるもの、それぞれの揺れが何らかのタイミングでシンクロするとハンドルの横揺れが発生するようです。海外ではデス・ウォブルとも言われており、場合によっては命に関わる現象なのだとか。ただ、それが発生する具体的な条件は様々なほか、起きた時の対処法も明確になっていないため、それが起こらないことを願うしかないのだとか。自分の場合は道路のヒビにタイヤをとられたのが直接的な原因かと思いましたが、病院搬送後の実況見分で再び現場に行った時には、自分が事故を起こした区間だけがきれいに道路を舗装し直してあったので真相は不明です。むしろそこだけ舗装がキレイになっていると何かあったんじゃないかと疑いたくもなりますが(笑

とにもかくにも6回目の事故、いずれも加害者ではないのが不幸中の幸いではありますが、回を重ねるごとにケガの程度が重くなっているので、7回目の事故に遭わないことを願うばかりです。今回、自動車保険とか傷害保険のありがたさや重要さを実感することとなったので、油断大敵と備えあれば憂いなし、これが大きな教訓です。